満つる月の如し 仏師・定朝

日 旧暦 3月20日 仏滅 癸酉 四緑木星 Patrik Patricia Påskdagen V15 24904 日目

日本を出発する数日前、会った友達の一人から、澤田瞳子著の「満つる月の如し」(徳間文庫)を手渡されて、それをスウェーデンへ持って来た。読んでみると面白かった。仏師・定朝の若い日からの様子が書かれてゐて、従って、時代は平安時代、それも栄華を極めた藤原道長がもうかなりの年齢に達した頃の物語である。無論創作であるけれども、中宮彰子、小一条院、小式部内侍等々、実在した人物が登場する小説は、架空の人物だけで構成される小説よりも僕には親しみやすい。艶やかな内裏から一歩外に出れば、放火や強奪の横行する当時の京の様子も表されてゐて、あの時代のことを想像するための手がかりとしても読み応へがあった。主人公は仏師・定朝とされてゐるが、僧侶隆範がむしろ主人公であるとも言へる。もう5年も前に新田次郎賞を受賞した作品であるとのこと。