日本人会医学セミナー

水 旧暦 11月2日 赤口 丙辰 八白土星 Andreas Anders V48 24755 日目

ストックホルム日本人会主催の学術講演会を聞きに行った。まづ同居人と孫の顔を見るために Huddinge 病院へ行って、それから Solna のカロリンスカ研究所へ足をのばした。ここで研究活動してゐる若手研究者、保坂佳代子氏と西村周泰氏、さらにJSPSセンター長の津本忠治氏のお三方による日本語での講演であった。JSPS とは日本学術振興会のことで、学術の国際交流を支援する団体であるが、ストックホルムにも研究連絡センターがある。保坂氏は「癌と血管研究の最新知見」と題して話された。癌細胞ができるとそこから新生血管が伸びて栄養を摂取しようとするが、その新生血管ができないようにすることで細胞を孤立化させる療法について話された。転移予防効果も期待できるとのことである。西村氏は「多能性細胞から神経細胞を作る!」と題して話をされた。iPS細胞、ES細胞など、多能性細胞は現代科学のキーワードであるが、発生、成長の過程で中脳ドーパミン神経はどの様に形成されるか、時間経過に沿った解析で、ヒトの多能性幹細胞からの成長と人工細胞からの成長を比較検討される研究の説明であった。さらに津本氏は「遺伝か環境かー脳の機能発達と臨界期」と題して話をされた。生まれた時にヒトの脳は冗長性の高い、多様な環境に対応できるものとして生まれるが、生後の学習により、よく使ふ部分だけが発達し、使はない部分は退化して、成長とともに脳の表面は薄くなっていくことを話された。また、その改変は生後何ヶ月とか何年とかいふ限られた期間の中でしか生じないので、その臨界期と呼ばれる期間内に、ある機能が使はれない様な操作をすると発達が阻害され、期間が過ぎてからでは操作を外しても発達は見られないことを話された。幼少期からバイリンガルとして育った人の脳と、成長してから外国語を獲得した人の脳の、ある部位の反応の比較などにも言及されて興味深いお話であった。