生産拠点の先進国への回帰

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三、四日前の日本経済新聞電子版でドイツのアディダスが生産の拠点をアジアから母国へ戻すことを決めたといふ記事を見た。これから先、人工知能の技術が進むと、生産拠点のアジア諸国から先進国への回帰が世界的な規模で起こる傾向も予想される。過去の20年間はアジアが世界の工場を目指して来た。その要因の一つは人件費の安さにあったと思ふ。生産工程がもっと機械化されてしまへば何も安い労働力を海外に求めなくても済むし、海外に拠点を置く事の心理的リスクも減る。もしも生産拠点が先進国に戻る傾向が強まるなら、先進国と途上国の格差が広がり、世界的に貧富の差がさらに拡大する心配はないだろうか。生産地と消費地は近い方が良いといふ原則もあるだろうし、日本の様な災害多発国では生産工場を海外にも持つことでリスクを分散させる利点もあるだろうから、母国回帰は俄かには起こらないかもしれないが、人工知能の進化は生産のグローバル化に逆行する一面を持つ可能性がある。それは人々の胸の奥に宿る潜在的な人種差別を呼び覚ますことにならないか心配だ。人々は口先では「人種差別はいけない」と言ふが、心の中では差別してしまふ人も世界には多く居るのではないか。大統領候補者トランプ氏のアメリカ第一主義の人気、英国のEU離脱論議、世界各地でのヘイトスピーチ民族主義の台頭などの流れに人工知能の進化は親和性が高いかもしれない。