昔の本たち

日 旧暦 11月21日 先勝 丁亥 六白金星 Jan Jannike V2 24078日目

若い時から、読みもしないと分かってゐる本を買ふ癖があった。いつか読むだらうと思って買ってしまふのである。後年になると極力本は買はない様に心がけたのだが、それでも若い時に買った本が読まれぬままに何冊も残ってゐる。定年退職して1年経ってもさほどそれらの本を読んでゐない。身の回りの整理とか、生活するだけで毎日が結構忙しいせいもある。でも、基本的には僕はさほど本が好きではないのだと思ふ。こんなことをしてゐると、若い時買った本が永久に読まれずじまひになってしまふ。人生論など、人生が終はる頃に読むものではないし、内容によっては、もう今はその時代では無い本もある。時代によって読まれる本の傾向ってあると思ふ。新書とは良く名付けたものだ。「いつか読むだらう」と言ふ心の裏には「その話題は未来永劫、不変である」と言ふ思ひ込みがある。しかし、世の移り変はりは予想してゐたよりも激しい。真の名著なら時代を超えて読まれるだらうが、多くの本は流行が過ぎれば読まれなくなる。僕にとって読まうか読むまいか少し悩むのは物理関係の読本である。大学時代、量子力学の話は同じ話を何度繰り返し聞いても分からなかった。さらに素粒子の理論もこの50年間に随分進歩したらしいがどうもすっきり良く分からない。当時は、これこそ最新の知識であると思って買った本でも、今ではもっと進んだ本も出てゐるだらう。そんな本は今更読まなくても良いやうな気もするし、一方で、内容が古くなってゐると知った上で読む価値がある様な気もする。めまぐるしい時代の変化の中で、置き忘れられた昔の本を読むのもまた別な楽しみかもしれない。今年は少しは本を読みたい。