与謝野晶子

日 旧暦 11月7日 大安 癸酉 一白水星 Benjamin Sönd. e. jul. Värnlösa barns dag V52 24064日目

与謝野晶子の「私の貞操観」を青空文庫で読んだ。色々な意味で感銘を受けた。タイトルからして僕にはドキッと刺激的であった。普通の人はさう言ふ話題には進んで触れないと思ふし、個人情報保護が強く叫ばれる昨今では、かう言ふことは話題にするさへ男女差別を訴へられるかもしれない。でも、誰の心の奥底にもそれぞれの貞操観はある筈だし、それは生きて行く上で結構大事なことであると思ふので、人の正直な告白を聞くことは自分の生き方への参考になると思ふ。世の中には色々な小説が沢山あって、それらはフィクションであると分かってゐながら、それぞれの読者は、そこに繰り広げられる物語から、それぞれの貞操観への影響を受けることはあると思ふ。明治と言ふ時代に自分の貞操観を文章にして発表するのは一大事件であったのではないかと思ふが、僕はそこから、溌剌とした明治の精神を窺ふ心持ちがした。男と女では、貞操観を比較することは本来無意味であるかもしれない。しかし、男と雖も、放縦な欲望の肯定と罪悪感との間で悩むことはあると思ふ。この本の最後のところに述べられた、「自分の肉体を清らかに保つのは自分の心の象徴だとして、何よりも先づ自分のために尊重するのである」と言ふ告白には、男であると女であるとを問はぬ力強さがあり、生命の歓びがある。