忘れかけてゐた名曲

月 旧暦 10月3日 赤口 己亥 七赤金星 Gudrun Rune V48 24030日目

音楽会に出かける時は、あらかじめそのプログラムを見てから出かけるものであるが、今日は演奏者が Stenhammar Quartet であること以外には内容をよく見ないで出かけた。この弦楽四重奏団の演奏はかなり定評があると聞いてゐたので、朝から降り続く冷たい雨と風と暗い空が憂鬱ではあったが、同居人と自動車で隣町まで出かけた。バッハの平均律のフーガを4曲、モーツァルト室内楽としてアレンジしてゐて (KV405)、 演奏はその曲で始まった。秋を感じる様な落ち着いた雰囲気で良かった。演奏はその後 Willhelm Stenhammar の弦楽四重奏曲第2番、Anders Hillborg の Kongsgaard variations と云ふ現代曲に続き、おしまひにはまたモーツァルトに戻って、弦楽四重奏曲KV421 で終はった(アンコールにはバルトークもあった)。KV421の演奏が始まった時、ああ、この曲だったのかと、随分嬉しくなった。と云ふのも、僕がまだ独身であった頃、当時はまだCDが発明されてゐなかったが、LPレコードでよく聴いた曲であったからだ。作品番号で言はれてしまふと曲名さへも忘れてゐたが、6曲あるモーツァルトハイドン・セットの中でも、この曲だけは何度も聞いたことである。その思ひ出が蘇った。当時の僕は、何枚か買ったLPレコードの中から、カルテットではこの曲と、ベートーベンのラズモフスキー第3番の2曲だけは、僕には特別な曲であった。それなのに、何故かいつからか、2曲ともあまり聞かなくなってしまってゐた。今夜は偶然にそんな曲を聴くことができて嬉しかった。いつの間にか雨も上がり、帰りの道には冬の星座の無数の星たちが漆黒の空に輝いてゐた。