僕の好きなもの

金 旧暦 7月24日 赤口 戊辰 八白土星 Albert Albertina V35 23579日目

日本経済新聞の夕刊1面に「あすへの話題」というコラムがある。僕は大抵毎日、電子版でこの欄を読む。毎日楽しく読ませてもらっているが、毎週金曜日にはバイオリニストの千住真理子が登場する。この人の文章は心に残るものがあって、何となく金曜日が待ち遠しく思われるようになった。今日の記事なども練習時間を制約されたことがかえって集中するための緊張につながったことについて書かれていた。分かるような気がする。僕らは夏休みをダラダラと過ごしてしまう。自責の念に思いあまって突然「あゝ、これではダメだダメだ!」と叫ぶと、隣で同居人が欠伸をしながら、「何がダメなのよ」とか、「それで良いのよ」とか言う。すると意志の弱い僕は「それもそうだな」と思い直して、さらにダラダラを続けてしまう。もしも同居人が「やっと分かったのね。今からでも遅くないのよ、頑張りなさい」と言ってくれるタイプの人であったなら、僕の人生はもう少しマシなものになっていたに違いないのだ。でも今日の記事を読んでいて、決定的に自分と違う点があることに気づいた。それは、練習をしたくてたまらないのにそのほとばしるような思いがせき止められている状態であるかどうかということだ。仕事が本当に忙しい時は、もう少し暇になれたらあれもできるのにな、これもできるのにな、と思いがちだが、いざ休みになってみると、やりたいと思っていたはずの気持が萎えてしまう。ということは、ほとばしるほどの思いであれやこれやが好きだったのではなかったのだということになる。年金生活開始まであと半年。自分に本当に好きなものがあるのか、ちょっぴり心配になって来た。明快な答えはただひとつ、寒い日におこたにあたってみかんをむいて落語かなんか聞く暮らしなら、「好きだ」と言えそうな気がする。