千万人と雖も

火 旧暦 12月8日 先勝 丙寅 三碧木星 Jan, Jannike V2 22615日目

高校時代は、いつも劣等感の中にあった。今から思うと、あの頃は幸せで貴重な3年間であったのだが、それは今だから言えることで、在籍していた当時は、とてもそんな風には思われなかった。女生徒達は不思議とみな国語が良くできた。そして大人びていた。ちょっと憧れの人もあったのだが、国語の力の圧倒的な差の前に憧れはますます遠くなるばかりであった。良家の子女というのか、家庭教育というものがあって、そこで出発点が大きく差をつけられているような気もした。進学校であったが、僕のように背伸びをして及第点すれすれで合格したものは入ってから後がきついということを嫌というほど知らされた。それなのに国語の時間はさほど嫌いではなかった。漢文を習い始めた時、文字を見つめているうちに、僕の祖先はきっと大陸から来ているに違いないというような不思議な感懐をおぼえたりもした。そして、故事を習うといつからかそれが深いところで自分の生き方に力を与えてもらっているように感じた。「自ら省みて直くんば、千万人と雖も吾行かん」などという言葉にも随分励まされた。当時は劣等感しかなかったけれども、僕は今になって、高校時代に受けた行き届いた国語教育と英語教育とに深く感謝している。