腕時計

月 旧暦 8月6日 先勝 丙寅 一白水星 Sture. V37 22497日目

以前使っていた腕時計は、知らない間に止まってそしてまた動き出すことがあった。それで時計を見る度に他の時計で時刻を確かめなければならなかった。つまり、時計として用をなさなかった。999回まで正しく示してくれても1回間違えるようでは安心していられないものである。今度の時計は、当たり前かもしれないが、その点では信頼性が高い。夜窓辺に置いて寝ると、夜中のうちに電波を受信して時刻の自動修正をしてくれる。スウェーデンに戻ってもう2週間近くになるが、一度も自動修正に失敗した夜はなかった。日本でもヨーロッパでも電波を受信してくれるのでありがたい時計である。自分はルーズなくせに時計だけには秒単位の正確さを求めるという、男に根ざした矛盾を抱えて生きている。ソーラー電池で動くので電池を交換する必要もない。電力節約のために、夜の間は文字盤が消えている。時計がいかにもすやすやと眠っているようだ。朝、主人である僕が先に起きて、ようやく外が明るくなってから、窓辺のパシエントをひねってやると、その明るさでパッと文字盤が目を覚まし、同時に自動受信に成功しましたと報告してくる。目覚めが遅れたことにちょっと恥じらいさえ見せている。だがなかなか素直で寝覚めの良い時計である。普通は時計に起こしてもらうのだが、この時計は逆に僕が起こしてやるのだ。そこがまた、僕の自尊心をくすぐるようで可愛い。自分は眠っていながら、時間が来るとアラームを鳴らしてくれたりもする。しかし、音が小さくて、家の誰もそれに気づかない。日頃から声の大きいお客さんとうるさすぎる目覚まし時計を敬遠している僕にとっては、そこがまた控えめに感じられて憎めないのだ。あまりこの時計を褒めると前に使っていた時計が嫉妬しそうなのでこれでやめよう。そいつは、引き出しの中でいつでも日本の時刻をさしている。コチコチと小さな音を立てて。