梓弓

月 旧暦 6月15日 友引 丁丑 五黄土星 満月 Jesper V30 22448日目

もうこれは捨てても良いだろうと思って何かを捨てると、その直後にそれがやっぱり必要だった、今捨てたばかりだ、というような体験をすることがある。伊勢物語には、京に上ったまま三年も帰ってこない男をひたすら待ちわびる女の話が出てくる。その間に優しく言い寄る別の男があって、何度も言い寄られた末にとうとう「いいわ」という事になった。するとまさにその晩に待ちわびた男が帰って来て扉をたたくのである。扉の外で男は、そうなのか、そういうことであれば新しい男と仲良くやってくれと言ってスタスタと去る。女はあわててその後を追いかけたのであるが追いつかず、清水のあるところまで来た時にとうとう力尽きて息絶える。こういう物語がいくつかのうたの応酬で綴られている。ぱらぱらと伊勢物語を見てこの話を思い出した。これはやはり男が悪い。昔の女がそうしてくれるならありがたいことだ、俺は心おきなく京のあの女のもとへ帰っていける、という男のずるさが見えるような気がしてならない。