大和魂

木 旧暦 6月11日 仏滅 癸酉 九紫火星 Magdalena Madeleine V29 22444日目

吉田松陰が獄中で詠んだうたに

身はたとひ武蔵の野辺に朽ぬとも留置まし大和魂

といううたがある。29歳の時のうたである。僕がまだ若かった頃、最初にこのうたに接して、進歩的な人間としての吉田松陰と、先の戦争で乱用された大和魂という言葉の持つ語感との間に距離を感じて、吉田松陰を理解する上にちょっと意外な気がした思い出がある。でも慣れ親しむうちにその意外な感じはだんだん薄くなっていった。吉田松陰はペリーの船に乗せてくれと掟を破って直談判で頼み込んだ人間であるが、その文はおそろしく難解な漢語調の文章であったらしい。吉田松陰のような革新的な思想に生きた人間をもってしても、辞世の句を詠むときには万葉集以来の伝統的な表現方法によったというところに、意外な気持ちと、安心する気持ち(こちらの方が大きい)と、そしてまた当時の日本語の状況を象徴的に垣間見るような感じとがないまぜになる。困った時、悩める時に真に勇気を与えてくれるうたである。