「刑事一代」を見て

日 旧暦 11月5日 先負 己亥 七赤金星 Israel Moses 4 i advent V51 22230日目

テレビ朝日で放映されたらしい「刑事一代、平塚八兵衛の昭和事件史」をやっていたので、第一部、第二部とも見た。どこまで史実を再現しているかはおのずからまた別問題ではあるが、ストーリーが実際に起きた事件をもとに展開するので、昭和という時代がどういう時代であったかを振り返る作品にもなっている。主演は渡辺謙。人権も今ほどやかましくは言われない時代であったので、取調べ時の暴力も実際はテレビで見るよりすごかったのではないかと思う。実際にはげしく自供を強要して冤罪を生むことまで起きていることを思うと、何が正しいのか僕らには分からなくなる。だが、刑事の捜査に執念と正しい直感がなくなれば真犯人はいつまで経ってもつかまらない。昭和の大事件を凌ぐ凶悪犯罪が日常化している現代において、警察のあり方はどうあるべきなのか考えてしまう。あの作品では、犯人はまともな人間になりたいと遺言して刑につく。平塚もそれを哀れんで墓に花を捧げる。ここに昭和という時代の救いがある。現代が抱える問題は、どんなに刑を重くしても、犯人が心から反省するという状況が生まれないのではないかという点だ。平塚のような刑事も二度と現れることはないだろう。体質的に彼に近い人間、あるいはその生き方に共感する人間が出ないということではない。正義感に燃える人間はこれからも現れるだろうが、法律や人権保護や組織の複雑さでがんじがらめにされて、思ったように動けなくなるという点で、平塚八兵衛のような刑事はもう現れないであろうと思うばかりだ。