浅田次郎の「一路」

火 旧暦 1月16日 仏滅 乙亥 九紫火星 満月 Torsten Torun V8 24475 日目

1月にインフルエンザで寝てその後しばらくは元気であったのに、1週間ほど前からまた調子がをかしくなって(免疫はもうできた筈なのに)、ここ数日はあらゆる日課を返上して休んだ。これはチャンスだと思って寝ながら本を少し読んだ。浅田次郎の「一路」。自分で買った本ではないのだが、家に借りてあるうちに読まうと思って読んだ。参勤交代で中山道を行く物語であるが、日本の山河や厳しい冬の情景が目に浮かぶ様で自分もまたその旅路を歩んでゐる気分になった。そこここにユーモアの漂ふ楽しい読み物であるのだが、それぞれのお役目にはそれぞれに人には分からない労苦のある様子も描写され、人間として生きる基本といふか、勇気といふか、果たして自分は大丈夫かなと考へさせられるところもあって、読後感としては悠に暇つぶし以上のものがあった。「御供頭心得」といふ古文書が焼け跡から見つかって、それは遥か昔の大坂夏の陣の頃に先祖によって書かれた参勤交代ガイドブックであるのだが、その心得がストーリーの展開に合はせて随所に出てくる。心得に合はせて筋ができたのか、筋に合はせて心得を創ったのかは分からないが、漢文調で書かれて、兎も角よく出来てゐて感心した。お殿様の枕元で小姓が平家物語太平記を読んで聞かせる場面も良かった。思はずその箇所を2、3度読み返してしまふ様な古典の引用も効果的であると思った。