なさけ

日 旧暦 11月6日 仏滅 戊申 七赤金星 Virginia 2 i advent V49 23679日目

3日前に大野先生の「もてなし」について書いたが、先生が書かれた「なさけ」といふ言葉の解説も忘れがたい。「なさけ」は、一語で外国語に訳しにくい言葉であるやうに思ふ。「け」は見た目、様子の意味の接尾語で、「きよげ」、「かなしげ」、「すずしげ」、「かはいげ」などの「げ」と同じであるといふ。「けなげ」もさうかもしれない。何かをなさうとする様子が見てとれる状態を「なさけ」といふさうである。大野先生がその執筆者のひとりである岩波の古語辞典には、「他人に見えるように心づかいをするかたち、また、他人から見える、思いやりある様子の意が原義。従って、表面的で嘘を含む場合もあり、血縁の人の間には使わない。」と書かれてゐる。心の中では、放っておきたい、関はりたくない、見て見ぬふりをしたい、と思ふのだが、一方で、それぢゃまづいよ、といふ自分もゐる。それで葛藤の末に表向きだけでも、「君のこと、心配なんだ」と言ふ。それがなさけといふことであるらしい。それはどこまで心のこもった言葉であるか、言ってゐる本人も分からない時もあるが、さういふ言葉を口にすることで、思ひやりが深まることもあると思ふ。