蘇我の娘の古事記

木 旧暦 3月17日 先勝 庚午 一白水星 Artur Douglas V15 24901 日目

日本を出発する前の日にちょっと銀座に立ち寄った時、教文館で「蘇我の娘の古事記」といふ本(角川春樹事務所、著者は周防柳)を買った。そもそも日本最古の史書が、日本書紀古事記といふ二つの形を持つことに違和感、疑問が無いでもない。漢文で書かれた正史は日本書紀だが僕にはとても読める本ではない。それに比べれば古事記の方は近しい感じがある。その古事記は如何に成立したか、それは必ずしもこの書物の書かれた目的では無かったかもしれないが、結果的にはなるほどと唸る様な展開になってゐる。大胆な仮説のもとに物語が進行し、読み物として、乙巳の変から壬申の乱あたりまでの流れを追ふ様に書かれてゐる。歴史の中で勝者は常に正しいわけではない。「私は、歴史といふのは滅びた人たちの歴史のことだと思ふのよ」、「物語を語りつぐことは、そこに語られる人たちの魂を慰めること」といふ言葉は現代にも通用するのではないか。著者はこの本では古事記を「ふることぶみ」と読ませてゐる。