震災の日

2023-03-11 (土)(令和5年癸卯)<旧暦 2 月 20 日>(先負 戊辰 二黒土星) Edvin Egon 第 10 週 第 27059 日

 

3月11日が、今年も来てしまった。あの日を境に全てをなくした人はたくさんある。津波に呑まれて亡くなって、親族もなく、役場の戸籍簿さへも一緒に流されて、この世に生きたあかしがどこにも残らなかった人もあるかしれない。難を逃れた僕らはそんな人たちもあったであらうことを忘れてはいけないと思ふ。自らが望んで隠遁生活を送る人であっても、この世に生きる以上、完全な隠遁はありえない。隠遁生活を送ってゐるといふ事実が密かに人に知られてこそ、その生き方には意味があるのだと思ふ。僕もよく知らないままで書くのだが、「いったん相互作用をしたふたつの粒子は、ふたつの一粒子系でなく、ひとつの二粒子系である」といふ考え方が物理学にある。一方の粒子に何か変化が起これば、両者がどれほど遠く離れてゐても他方の粒子に影響が及ぶ、といふ考へかたである。いったんこの世に生を受けたものは、この世と相互作用をしたのである。身はたとい水底の藻屑と果てぬとも、この世に生きたその人たちの記憶は現世の僕たちに影響を与へない筈はないと思ふ。震災の日にあらためてそんなことを思ふ。

気温は氷点下だが、柔らかい春の陽射しが心地よい。散歩の楽しみここにあり。