平家物語 巻第四 「源氏揃 2」

2022-08-21 (日)(令和4年壬寅)<旧暦 7 月 24 日>(赤口 丙午 三碧木星) Jon Jonna 第 33 週 第 26857 日

 

その頃、近衛河原に住んでゐた源三位入道頼政は、ある夜ひそかに高倉の宮の御所にやって来て、おそろしいこと(とてつもないこと)を告げるのであった。「あなた様は天照大神48世の御末、神武天皇より78代に当たられます。太子にもたち、位にもおつきになるべきであるのに、30まで宮のままでゐらっしゃることを残念だとはお思ひになりませんか。当世のありさまを見るにつけても、上には従ってゐる様に見えても、内々は平家を恨み憎まないものがありませうや。ここはひとつご謀反をお起こしになり、平家を滅ぼし、法皇がいつまでといふ期限もなしに鳥羽殿に押し込められてをられるそのお心を休めまいらせ、あなた様も位におつきになるべきです。これこそご孝行のいたりといふものではありませんか。もし、思し召しになって、平氏追討の令旨を出してくださるものなら、悦びをなして馳せ参ずる源氏どもは多くございませう。」と言って言葉を続けるのであった。

横雲の切れ間から漏れる秋の夕日