平家物語「金渡」

2022-03-16 (水)(令和4年壬寅)<旧暦 2 月 14 日>(先負 戊辰 二黒土星) Herbert Gilbert 第 11 週 第 26705 日

 

平重盛はまた自分の後の世についてこんなことも心配した。「我朝にどんなに善行を積んでも、子孫がいつまでも弔ってくれるとは期待できない。他国にも善行を積んで、後の世を弔ってもらふことにしよう。」安元の頃、鎮西の国(九州)より妙典といふ船頭を呼び、人をはるかに退けてご対面になった。三千五百両もの大金を用意して、「汝は大正直のものであると聞いてゐる。それで、このうちの五百両は汝が取っておきなさい。三千両は宋朝へ持って行き、育王山へ参って、千両を僧に配り、二千両を御門へ参り、田地を育王山へ都合してもらって、わが後の世を弔ふように頼んで欲しい」妙典はこれをいただいて、万里の煙浪をしのぎつつ、大宋國へ渡った。育王山の方丈佛照禅師徳光に面会し、この由を申し上げると、方丈は感激し心からありがたく思った。それで千両を僧に配り、二千両を御門にお持ちし、重盛の言葉を具に申し上げると、御門は大いに感心されて、五百町の田地を育王山へ寄せられた。さうして日本の大臣平朝臣重盛公が来世で善所に生まれるようにと祈ることが、今でも行はれてゐるといふことである。

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気圧は高いが、霧がかかった一日であった。