平家物語「無文 1」

2022-02-20 (日)(令和4年壬寅)<旧暦 1 月 20 日>(友引 甲辰 五黄土星) Vivianne 第 7 週 第 26681 日

 

このおとど平重盛)は生まれながらに不思議な人で、未来のことを前もってお分かりになることがあった。さる4月7日にご覧になった夢も不思議であった。場所はどこか分からないが浜路をはるばると歩んで行く夢であった。行けば道の傍らに大きな鳥居があった。「あれは何の鳥居ですか」と質問すると、「春日大明神の御鳥居です」と返事があった。たくさんの人が集まってゐる。その中に法師の首がひとつあがった。「さて、あの首はどうしたことですか」と質問した。すると「これは平家太政入道殿のお首です。悪行がたくさん重なったので、当社大明神がお召し取りになったのです。」と返事があった。もうびっくりで夢もうち覚めて、「当家は保元平治よりこのかた、度々の朝敵をたいらげて、勤賞身にあまり、かたじけなく一天の君の御外戚として、一族の昇進六十余人。二十余年のこのかたは、たのしみさかへ、申しはかりもなかりつるに、入道の悪行超過せるによって、一門の運命すでにつきんずるにこそ」と、来し方行く末のことをあれこれとお思ひになって、御涙にむせばれるのであった。

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陽が光を増して、雪にまぶしく反射した