平家物語「辻風」

2022-02-10 (木)(令和4年壬寅)<旧暦 1 月 10 日>(仏滅 甲午 四緑木星) Iris 第 6 週 第 26671 日

 

治承3年(1179年)5月12日正午ごろ、京の町に強いつむじ風が吹き荒れ、多くの家が倒れた。風は中御門京極より起こって南西の方向に吹いていった。棟門(屋根が普通の家の棟のようになった門)、平門(屋根の上が平らな門)を吹き抜けて、四、五町、十町と吹きもてゆき、桁や長押や柱などが虚空に舞った。屋根に葺かれた檜皮などはまるで冬の木の葉が風に乱れるようであった。激しい音を立てて鳴りどよむ様子は、あの地獄で吹くと言はれる大暴風でもこれには過ぎないだろうと思はれるほどであった。建物が破損しただけでなく、命を失ふ人も多かった。牛馬の類は大量にうち殺された。これはただ事ではない、何かのしるしであろうといふことで、神祇を司る役所で占ひが行はれた。「これから百日のうちに、高い禄を食む大臣は慎まねばならない、天下には大事が起こり、仏法も王法も共に傾いて、兵乱が相次いで起こるであろう」と出た。神祇官の占ひでも陰陽寮の占ひでも同じ卦が出た。

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日の沈む方向は次第に北へと移りつつある