平家物語「僧都死去 4」

2022-01-16 (日)(令和4年壬寅)<旧暦 12 月 14 日>(先勝 己巳 六白金星) Hjalmar Helmer 第 2 週 第 26646 日

 

有王は僧都の御娘のゐらっしゃるところに参って、あったことを始めよりこまごまと申し上げた。「お手紙をご覧になってからは、いっそう思ひがまさられました。硯も紙もありませんからお返事をお書きになる事も出来ません。そのお心のうちはみんな誰にも伝へられずに消えてしまひました。今となっては生き変り死に変って多くの生を繰り返しても、どうしてお声を聞いたりお姿を見たりすることができませうか」と申し上げると、姫はふしまろび、声も惜しまずに泣かれた。そのまま十二歳の尼となって奈良の法華寺にて父母の後世を弔はれたのはあはれであった。法華寺聖武天皇が総国分尼寺として創設したお寺で、地図で見ると平城宮跡の東側にある。有王は俊寛僧都の遺骨を首にかけ、高野山へ上り、奥の院で納骨した。蓮華谷にて法師になり、諸国七道を行脚する修行をして主の後世を弔った。蓮華谷は高野山金剛峰寺の東半里にある谷と注記にあり。このように人の思ひ嘆きのつもった平家の末こそ恐ろしいものである。

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プラスの気温が続いて雪はなし。