もがり笛

2021-12-27 (月)(令和3年辛丑)<旧暦 11 月 24 日 仏滅 己酉 六白金星)下弦 Johannes Johan 第 52 週 第 26626 日

 

「もがり笛」は冬の季語になってゐる。手元の俳句歳時記(角川書店編)の解説によると、「もがり」といふのは、枝のついた竹の物干し、高く設けた紺屋の干場、あるいは枝を払った竹で作ったかきねなどのことで、強い勢ひで、それらに突き当たって発する笛の音に似た鋭い風音をもがり笛といふのだが、今はもう少し広範囲の風音にも用いる、と書かれてある。雪が深く積もってしまへば静かなのかもしれないが、電線が風で揺れる音などももがり笛といふのかもしれない。日本では今日、日本海側を中心に記録的な大雪であるとニュースで見た。シンと深い雪に閉ざされた山里の風景は、昔の日本の冬景色を思はせて、僕は嫌ひではないのだが、そこに生活してゐる人たちの苦労も思はねばならないと思ふ。ところで「もがり」といふ言葉には、上記の意味とは別に、貴人の葬儀の準備が整ふまで、遺体を棺におさめてしばらく仮に置いておくといふ意味の言葉もある。こちらは「殯」と書く。人の死はいっときに迎へるものではなく、惜しみつつ長い時間をかけて次第にこの世を去って行くものだ。その葬送の時の流れを慎む意味がこめられてゐると思ふ。「もがり」にはそのような意味もあるので、「もがり笛」といふ言葉は余計に寂しく感じられる気がする。

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今週は 2021年(令和3年)の最後の週である