平家物語「少将都帰 6」

2021-12-16 (木)(令和3年辛丑)<旧暦 11 月 13 日 大安 戊戌 八白土星) Assar 第 50 週 第 26615 日

 

少将は都に入ると舅(妻の父)平宰相(平教盛)の宿所に入った。少将の母上は普段は、今で云へば東山区清閑寺霊山町にある、伝教大師が創設した正法寺、この物語の当時はそのお寺を霊山と呼んでゐたが、そこに住んでをられた。が、昨日からは宰相の宿所に来て待ってをられた。少将が家に入る姿を一目見て、「命あれば」とばかりおっしゃるのであった。能因法師の歌

命あれば今年の秋も月は見つ別れし人に逢ふ夜なきかな

をふまへて、子供には会へたけれども亡夫にはついに会へない嘆きを、そのうたに寄せて漏らされたのである。布を頭から覆ひかぶせてうつむいてをられた。宰相の内の女房、侍どもは集まって、皆喜び泣きをした。まして少将の北の方、めのとの六條の心のうちはどんなにかお喜びであったことだろう。六條は尽きせぬもの思ひに、黒かった髪もみな白くなり、かつてはあんなに華やかに美しいお方であったのに、いつしかやせ衰へて、その人とも見えないご様子であった。

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午後3時前に日が沈む。正午でも日は傾いてゐる。