平家物語「山門滅亡 1」

2021-05-29 (土)(令和3年辛丑)<旧暦 4 月 18 日> (先負 丁丑 八白土星)  Veterandagen Yvonne Jeanette    第 21 週 第 26404 日

 

官軍と学生が連合して堂衆を攻めたのだが、意外にも大敗してしまった。それから後の比叡山はいよいよ荒れ果ててしまった。十二禅衆と言って、法華三昧・常行三昧を行ふ十二人の僧の他にはもう止住の僧侶を滅多に見なくなった。谷々の坊で開かれた講演は絶え果て、御堂ごとの修行も行はれない。修学の窓は閉じられ、座禅の床も虚しくなった。四教五時(釈迦一代の説教がそのように分類されたと言ふ)の春の花もにほはず、三諦即是(空・仮・中の三真理は一体であるといふ天台の真理)の秋の月も曇った。三百年の法燈をかかげる人もなく、一日六回たかれる香の煙も絶えてしまったようである。かつては堂舎高くそびへ、三重の構へを青い大空にさしはさんで、むねとはしらは立派で、四面のたるきが白霧の間にかかってゐたものだった。それが今では仏の供養も峯の嵐にまかせ、尊い仏のお姿も雨露にさらされるありさまである。夜の月がまるでともしびのように軒の合間から漏れ、暁の露がまるで珠のように蓮の台を飾るほどに荒れてしまった。

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ライラックも時々見かける