平家物語「徳大寺之沙汰 2」

2021-05-07 (金)(令和3年辛丑)<旧暦 3 月 26 日> (仏滅 乙卯 四緑木星) Carina Carita   第 18 週 第 26382 日

 

来てみれば、厳島には優雅な女の人たちがたくさんゐた。七日間参籠したのだが、夜も昼も付き添はれて大変なおもてなしを受けた。七日七夜の間に舞楽も三度あった。琵琶琴ひき、神楽うたひもあり、實定卿も楽しいことと思し召し、神様に楽しんでいただくために、みづからも今様をお歌ひになった。郢曲(えいきょく)と言って、舞楽や神楽とは別のジャンルの、余興で即興に歌はれる歌(今様、朗詠、風俗、催馬楽など)のめづらしい曲もあった。今で言へばカラオケのようなものかもしれない。あの頃はコロナの心配もなかったし、、。内侍たちは寄って来て、「當社へ来られるのはいつも平家の公達ばかりですのに、平家ではないあなた様がお見えになるのもめづらしいことです。どんなお祈りのためにお見えになったのですか」と聞いた。「自分を超えて他の人に大将になられてしまったので、なんとかその大将にならせてほしいとお祈りしたのです。」とお答へになった。さて、七日の参籠が終はって、大明神にお暇して都に帰る時が来た。お名残惜しいですと言って、主だった若い内侍十余人を一緒に舟に乗せて、一日分の舟路を都に向かって旅した。内侍たちは「それではここで失礼します」と言ふのだが、「このまま別れてしまってはあまりに名残惜しいですよ」と實定卿は言ひ、「もう一日の旅路をご一緒に」「もう二日の旅路をご一緒に」と言った次第で、都まで連れて来ておしまひになった。徳大寺殿の亭にご案内して、様々におもてなしをし、贈り物など与へてお帰しになった。

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この2羽のウサギは時々家の前までやって来る