平家物語「西光被斬2」

2020-11-09 (月)(令和2年庚子)<旧暦 9 月 24 日> (友引 丙辰 五黄土星) Teodor Teodora   第 46 週 第 26204 日

 

新大納言成親卿は、平家を滅ぼしたいと思って内密に計画を進めて来たが、山門の騒動があったものだから、その計画は中断された形になってゐた。いや、その間にも内相談や準備はさまざまに行はれてゐたのだが、みせかけだけの勢ひではこの謀反はうまくいかないのではないかと思はれた。それで、武門として一番頼りにされてゐたはずの多田蔵人行綱は、こんなことはしない方が良かったのにと思ふようになった。手付金として、弓を包む袋にしたらよかろうと言はれて受け取ってあった布を、直垂、帷子などのスーツにしてしまって、家子郎等どもに着せながら、目をパチパチさせてどうしたものやらと考へ込んだ。よくよく平家の繁昌する有様を見れば、当節簡単には滅ぼすことなどできないぞ、不都合なことに手を貸したものだな、もしこのことが漏れてでもみろ、真っ先に殺されるのは自分だぞ、他人の口よりもれぬ先に自首すれば命は助かるだろうといふ気持ちになったのである。

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晩秋の散歩道は曇りがちで寒い