平家物語「鹿谷4」

2020-07-22 (水)(令和2年庚子)<旧暦 6 月 2 日> (先勝 丙寅 七赤金星)大暑 Magdalena Madeleine 第 30 週 第 26094 日

 

「神非礼を受け給はず」ー道理に外れた祈願をしても神はその心をお受けにならないーといふ言葉もあるのに、成親は分際に過ぎた大将を祈ったので、色々な奇怪な出来事が起きた。祈りは虚しく、成親は左大将になることができなかった。その頃の叙位除目は平家の思ふままであった。入道相国の嫡男小松殿(平重盛)が、それまで右大将であったのが左大将になった。また、右大将には次男宗盛が就任した。予想されてゐた徳大寺・花山院は宗盛よりずっとご身分が高かったのに、その人たちを差し置いての大抜擢であった。新大納言成親は、「徳大寺・花山院に超えられたのならばあきらめもつくが、平家の次男ごときに越えられたのでは腹の虫が収まらない。何としても平家を滅ぼし、本望を遂げたい」と物騒な言葉を漏らした。成親の父は中納言であったが、その末子にして位正二位、官大納言にまであがり、大国をたくさんいただいて朝廷のご恩は大きいのに、なんの不足があってこの様な心が起きるのだろうか。天魔の仕業としか思はれない。平治の乱には越後中将として藤原信頼に加勢し、本来ならば誅されるべきところを、妻の親戚関係から平重盛に様々にお願ひしてもらってやっとの事で命拾ひをした。その恩も忘れて、さらなる欲望にかられ、兵具をととのへ、平家討伐の準備を進める。成親はその陰謀の他には何も考へなかった。

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空の西半分は雨雲に覆はれ、東半分に青空があった。