平家物語「殿下乗合4」

2020-07-05 (日)(令和2年庚子)<旧暦 5 月 15 日> (先勝 己酉 六白金星)満月 Laila Ritva 第 27 週 第 26077 日

 

このニュースを聞いてもうびっくり仰天なのは重盛である。いかに清盛入道のはかりごととは言へ、なぜこの重盛にツユほども知らせなかったかと言って、関係者全員をクビにした。「そもそも資盛が悪い。栴檀は二葉よりかうばしといふが、十二、三歳にもなって礼儀を知る年齢であるといふのに、情けないことをしでかして、お祖父さまの悪名を立ててしまったのだ。不孝のいたり、汝独りにあり」と言って、しばらく伊勢の國に追ひやった。それで、君も臣も、小松どのはよくものの分かったお方だと言ひあった。

現代の感覚では、身分の高い人のお出ましにいちいち下馬の礼をとるのは民主的でないと思ふ人もあろう。また、最初に手を出したのは摂政の随身の方だから、摂政側も行き過ぎであったといふ見方もあると思ふ。しかし、この時代には礼儀をおもんじることが人の世の美しさであり、また秩序の維持のために大事なことと考へられてゐた。現代でも礼儀正しい人は見てゐて気持ちが良い。それに反して礼儀知らずの振る舞ひは醜い。不用意に見知らぬ人に注意すれば思はぬ災難にあふこともある。何のために礼儀を守るべきなのか、人によってその考へ方も様々なのかもしれない。正しい礼儀はコレだと決め付けて、それを周囲の人に求めるのではなく、まづ自分が己の美の基準に照らして良いと思ふ言動を選んでいくことが大事かなと思ふ。それにしても、こんな些細な事件の中に栄耀栄華の滅びゆく要因が隠されてゐた。身の回りに起きる小さなことでも大事に考へなければならないと思ふ。

コロナで家に閉ぢこもり、手書きで少しづつ平家物語を写し取り、「殿下乗合」まで終へたので、自分へのメモとして書いた。あ、読んでくださる人もあるらしい。昨日の記事で宮崎さんから連絡があり、「平安京探偵団」といふホームページが参考になることを教へていただいた。同志社女子大学の山田教授が書かれてゐるホームページである。

f:id:sveski:20200706044037j:plain

昼は雨が降ったが夕方に上がった。