漢詩を写す

2019-07-24 (水)(令和元年己亥)<旧暦 6 月 22 日>(先負 壬戌 五黄土星) Kristina Kerstin 第 30週 第 25731 日

 

認知症を少しでも予防したいために、僕は色々なことを同居人に勧めるのだが、どれもあまり興味を示さない。嫌なことを無理に勧めるのは良くないのでそのままにする。いや、実をいふとそんな中でひとつだけ得心してやる日課がある。それは漢詩をノートに書き写す作業である。これはコンピュータと全く縁を切ってできる作業で、同居人は字を書くことで落ち着いた時間になるといふ。最初は写経も思ったのだが、あまり宗教的な色彩がないものの方が良い気がして、漢詩をノートに写し取ることを思ひついた。「こくご18マス」といふ小学生用のノートに1日1ページづつ、漢詩を写して行くのだ。本当は自分ひとりの勉強のために始めた日課であるのだけれど、それを見た同居人は私も書きたいといふので、僕はノートの上半分に詩を写し、同居人はそれと同じことを下半分に写すことになった。同居人は訓読の方も写すので、ノートにはそれなりのスペースを開けて僕は書き進める。1日2ページになることもある。なるべくきっちりとした楷書で書く。時々バランスの悪い字になるので鉛筆と消しゴムを使ふ。同居人は僕よりもずっと上手で味はいのある字を筆で書いて、余白を埋めて行く。こんな風にして、今は7冊目のノートにかかってゐる。去年の7月5日に頼山陽の「天草灘に泊る」で始めた。平凡社から出てゐた一海知義著の「漢詩一日一首」をお手本に始めた。1年が巡って、今年の6月1日にその本の漢詩の部分を写し切った。その後は、吉川幸次郎三好達治著の岩波新書「新唐詩選」をお手本に毎日漢詩を写し取る作業を進めてゐる。杜甫李白と進んで今は王維。この本が出版された時、印刷する方も大変だったらうと思ふのだが、昔の画数の多い漢字がたくさん出てくる。目も悪くなった僕はそれをルーペで拡大したり字引を引いたりして漢字を写す。これも老後の楽しみのひとつか。

 

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Nyköping 川にかかる橋の上で。Östra Trädgårdsgatan。