定規の思ひ出

2018-12-12 (水)(平成 30 年戊戌)<旧暦 11 月 6 日>(仏滅 戊寅 六白金星) Alexander Alexis 第50週 第 25508 日

 

45 年前の日本でのことだが、学校を卒業して会社に入り、配属されたオフィスで僕を待ってゐたものは、机とキャビネットと製図台であった。僕はこんな仕事をすることになるのかと戸惑ったが、使ってみると製図台は何かと便利なことが多かった。何年もしないうちに配置換へなどもあって製図台を背面に置いて仕事をするスタイルではなくなったが、昔はコンピュータなどなかったので、その後も、表を作る時など定規が必要であった。普通の定規は 30 cm なのだが、それでは短い。僕は自分で 45 cm の定規を購入して愛用した。厚さ 3 mm 幅 45 mmあり、平行線を引くにも便利なしっかりした定規であった。普段はそれを職場に置いておいたのだが、ある時誰かが僕の定規の便利さを知ってかそれを無断で使って、ナイフを当てた様なのだ。それ以来、線を引けばカクンと途中に段差が入る様になった。大事な直線なのに。僕にとっては高価な定規であったし、大事に使ってゐたし、その時ひどい衝撃を受けた。が、怒りを鎮めてじっと堪えた。もう一本新しいのを買はうかとも思ったが、それは思ひ止まって、怪我をした定規を労わりながら使ふことに決めた。今でもその定規は僕の机の引き出しにしまってある。恨みを包んで「恩賜の御衣は今ここにあり」の心境だ。ちょっと違ふか。今もたまにそれを使ふことがあるとその古傷を相憐れむ様に撫でてやる。それにしても、たかが定規の古傷であってもこれだけ僕は胸が痛むのだ。過去にいじめやセクハラにあった人たちはきっと誰にも言へない苦しみをいつまでもいつまでも心の奥にじっと耐へてゐるのかもしれない。

 

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冬の寒空にも日が射して..... まだ2時前なのに夕方の様な。