お茶さへ飲まないで

2018-10-07 (日)(平成 30 年戊戌)<旧暦 8 月 28 日>(大安 壬申 七赤金星)Birgitta Britta 第40週 第 25443 日

 

英語の基本文型は、五つあることを中学生の時に学んだ。分かりやすいと言へば分かりやすいのだが、英文を作ってみるときに僕が時々迷ふのは副詞を置く位置である。それは5文型の知識だけでは解決できない。やはり例文で覚えるしかないのかもしれないし、英語のできる人から見たら、なんだ、そんなこと、と思はれるかもしれないのだが、僕は今でもしょっちゅう間違へる。英語の素人っぽさは語彙の貧弱から来るよりもその様な語順の間違ひから見つかる場合が多いかもしれない。由紀さおりの往年のヒット曲に、「生きがい」(山上路夫作詞・渋谷毅作曲)といふ歌があって、その中に「お茶さへ飲まないで とび出して行くのね」といふ歌詞がある。この「お茶さへ飲まないで」を訳すると、多分、’You don’t even have tea’ になるのかなと思ふ。日本語では「お茶さへ」と、「さへ」が強調する対象は「お茶」といふ名詞なのだが、even といふ副詞を使はうとすると、強調する対象は動詞になるべきなので、「お茶を飲むことさへしないで」みたいにもとの日本語の方を意訳しないとダメな気がする。’You don’t have even tea.’ ではきっと不自然なのではないかと思ふが、その様な間違ひを僕は時々やってしまふ。「君さへよかったら」と言ふ時も、日本語では「さへ」の対象は「君」だと思ふが、英語では「君が良いと思ふ状態」が「さへ」の対象になると思ふ。’If only you like it’ くらいになるのかな。「君が良いと思ふ状態」でさへあるなら、といふ言ひ方と、「他ノ誰デモナイ君サヘ」といふ言ひ方には温度差がある様に思ふ。それでは、藤原定家の「行きなやむ 牛のあゆみに 立つ塵の 風さへあつき 夏の小車」の「風さへあつき」を英語で言ふとどうなるのでせう。日本語は便利で良いなあとつくづく思ふ。

 

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木々は美しく秋を迎へる。人は何故、人生の秋を迎へる時、老醜と言はれるのでせう。