拡張と収縮

木 旧暦 7 月 13 日 先勝 丁亥 七赤金星 処暑 Signe Signhild V34 25397 日目

戦後の日本は焼け野原から出発し、人々は貧困から這ひ上がった。そんな子供時代を過ごした僕らには外国とは本当に遠いところであった。1ドル360円とか固定されてゐて、外国へ行くにも大変なお金がかかる時代であった。ところが大正時代とか昭和初期の頃までの日本人は、航空機が未発達であったにも拘はず、予想以上に外国へ出てゐた様に見受けられる。もちろん限られた人たちではあったのだらうが、それでも僕らが子供時代に感じたほどには外国は遠くなかった時代があったのではないかと言ふ気がする。人が外国へ出て行く時期を拡張期と呼び、出ていかない時期を収縮期と呼ぶなら、明治時代に近代国家として出発した日本は一様に拡張したのではなくて収縮期があった。拡張期とは即ちグローバル化の時代であるとも言へる。嘉永6年に黒船が開国を求めて日本にやって来た時、日本人の様子を観察したペリー提督は、「この国に開国を迫ることは本当にこの国のためになることだらうか」と個人的な感慨を持ったことを何かの本で読んだ記憶があるが、その感慨は今尚、グローバル化の是非を問ふ課題でもある。昨今の世界各地に見られるポピュリズム民族主義の台頭もまた、拡張一方であってはいけないと言ふある種のバランス感覚の発露であるかもしれない。

 

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