見知らぬ人と話す時

金 旧暦 6 月 29 日 仏滅 甲戌 二黒土星 Lars V32 25384 日目

僕は自分のことを愛想の無い人間だと思ってゐる。特に知らない人に向かって自分の方から挨拶を交はすことはまづ無い。そんな人間であるから放っておいてもらひたいのだが、知らない人から声をかけられることはままある。プールで裸になってゐる時にそれがよくある。先日、泳ぎを終へて体を拭いてから日焼け後の肌クリームを全身に塗ってゐたら、僕の目の前にヌッと黒い大きい手のひらが差し出された。「ン?」と一瞬思ったが、「俺にもそのクリームをくれ」といふ意味だとすぐにわかった。それで、スプーン一匙ほどの量をその手のひらに乗せてやった。男は満足さうにした。次に更衣室へ移った。男も更衣室に来た。僕は髭を剃った後だったので、アフターシェーブローションの旅行用の小瓶を使った。すると男はまた寄って来てまた手を出した。今度も僕はその手のひらにローションを垂らしてやった。次はヘアトニックを使ふ番だ。ヘアトニックを頭にかけると男は僕を見て、それもくれといふ仕草をした。思はず僕はその男を見上げた。するとハゲ頭である。「君ね」と僕は声をかけようとしたが、すぐにまあいいやと思ひ直してヘアトニックを分けてやった。男は髪のない頭にヘアトニックをふりかけた。順番から言へばこの後僕は、リップクリームをつけるのであるが、「俺にも塗らせろ」と言はれては困るので、その日はリップクリームをスキップした。男は自分でも何かの化粧水を持ってゐて、僕につけてみろと言った。欲しくもなかったがこれも付き合ひかと思って1滴もらふと男は嬉しさうにした。「どこから来たのか」と聞くから「日本からだ」と答へた。男はソマリアから来たと言った。名も名乗った。人懐こくて憎めない感じがあった。日本ではあまりこの様な見知らぬ人との付き合ひは無いと思ふ。

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