新幹線での殺生事件

木 旧暦 5 月 1 日 大安 丁丑 五黄土星 新月 Håkan Hakon V24 25327 日目

殺生事件といふものはこれまでは街の中で起きるものであったが、最近の事件は新幹線の中で起きた。「相手は誰でもよかった」タイプの殺人事件が毎年繰り返されて、何とか防ぐ手段はないものかと思ふ。この様な事件は昔はなかったのだらうか。遠野物語を読んだら変な話が出てゐた。ある日の昼頃に孫四郎といふ男は「ガガはとても生かしては置かれぬ、今日はきっと殺すべし」と呟いて、大きな草刈鎌を磨ぎ始めたといふのだ。ガガとは母を指す。そのありさまが戯れ言の様にも見えないので、母はあれこれと謝ったりしたのだが一向に聞き入れない。そのうちに臥してゐた孫四郎の嫁も起き出して諌めるのだが従ふ気色もない。夕方になると孫四郎は磨ぎすまされた大鎌を手にして、つひに母親に襲ひかかった。騒ぎを聞きつけた里人が驚いて警察官を呼んだ。捕へられ、引き立てられていく息子をみて、母親は、滝の様に血を流しながらも、「私は恨みも抱かずに死んで行くから、孫四郎は許してたまはれ」と叫んで息絶えたと言ふ。人の気を狂はせるものは何であらうか。孫四郎の場合、「相手は誰でもよかった」タイプではないが、昔から斯様な事件はあった様である。一般に心の病として説明されるが、科学では説明できない働きも作用してゐるかもしれない。