本を読まねば

金 旧暦 12月16日 先負 庚子 一白水星 Knut V2 24799 日目

三日ほど前の日本経済新聞夕刊「あすへの話題」のコラムに、エッセイストの岸本葉子が、「本を読まねば」と題して書いてゐた。「忙しい」といふ言葉を一度も使はずに生活の忙しい状況がよく出てゐてプロは違ふなと思った。我が身につまされる部分もあったが、文筆家であってもその様な悩みを持つことがあることを知ってホッとした。僕は読書らしい読書もせずにこの年齢まで来てしまったことへの焦りが心のうちにいつもある。でも一方で、読書はそんなに大事かなといふ疑問も同時にある。今や誰もがコンピュータやスマホを利用して情報を発信できる時代、大げさに言へば個人で本を出版できる時代でもある。この情報の洪水の中で、何を読んだら良いか分からなくなり、読書はいくらやっても到底追ひつかない。「朝に道を聞かば夕べに死すとも可なり」と言はれれば万巻の書を紐解く時間もない。デカルトは、本を読んで、ものごとを考へる筋道を他人から受けるのでなく、何も読まずに自分の頭で考へろと言った様に記憶する。さういふ考へ方も一理あるかなと同調して、怠惰であるだけの己を変に正当化してしまふこともある。でもやはり、「本を読まねば」とそのあとから思ふ。