レスボス島

金 旧暦 10月2日 大安 癸巳 四緑木星 Kristian Krister V46 24373日目

地方新聞 Södermanland Nyheter は最近僕らの町から特派員をギリシャのレスボス島に送って、その現地の様子を毎日の様に新聞に載せる。現地の漁師がもう2ヶ月以上も海に出ることができないでゐる話とか、海に浮く死んだものばかりをもうこれ以上見たくない語り話とか、現地の悲惨な様子が伝はって来る。飢え、渇き、寒さの中で難民の親が子に根拠もないのに「もう少しの辛抱だからね」と言ひきかせて励ます様子とか、その果てに死んでしまふ様子とか、聞くもあはれである。さらにさらに大量の難民が毎日押し寄せて来る。「エーゲ海」と言へば昔は美しい海や風景を連想したが今は恐ろしい光景に変はった。福島で津波に伴ふ原子力事故があった時、住民が未知の町へ強制避難させられて、それはそれで胸の痛む事件であったけれども、こちらはもうそれ以上の大変さである。バスが用意されるわけでなく、高いお金を自分で払ってぎゅうぎゅう詰めの小船に乗せられて避難し、挙句に命を落とす人が沢山ゐる。何が悪いのか、誰のせいなのか、難民は怒りをどこへぶつければ良いのか、この状況を止めるにはどうしたら良いのか。そしてこの現実は、同時代を生きる僕とどこでどの様に繋がるのか。如何にインターネットが発達した時代であっても、この様な現地の状況を把握するには、ジャーナリスト達の活動に頼る他は無い。僕はただ、暖かい自分の部屋でコーヒーを飲みながら、ネットや新聞の記事に目を通すばかりである。