人はなぜ都会に憧れるか

木 旧暦 5月17日 先負 己卯 三碧木星 半夏生 満月 Rosa Rosita V27 24250日目

僕は半世紀近く前、高校を卒業して上京した。大学受験で一校だけ合格して、浪人する気は無かったからそこに入学手続きをとり、首都圏に住むことになったのである。新しい生活が始まって僕は毎日が楽しかった。新しい友達が言ふには「東京に来ると本屋に置いてある本の質や量が田舎とは全然違ふ、僕はそのために上京した様なものだ」それを聞いた僕はそんなものかなと思った。僕の場合は、うまく言へないけど、心のどこかに都会への憧れがあったんだと思ふ。僕はこれから先の老後を人で混雑する都会で過ごしたいとは思はないが、若い時に都会で過ごした経験はやっぱり良かったと思ふ。今は地方都市の特色がだんだん薄れて、どの町も似たような感じがあり、小さな東京が日本中のいたるところにある。それに通信も物流も発達してゐるから、東京へ出なくてもさほど不便は感じなくなった。それでも若い人が東京に出たがると言ふのは、「地方には仕事が無いから」といふより彼らは東京に憧れてゐるのだと思ふ。「そこへ行けば良いことがあるのではないか」東京への一極集中を推し進めてゐる要因はそんな若者心理にあるのではないか。無理に「東京へ行くな」と止めるより、行って体験して「こんなものか」と思ったらまた田舎に帰ってもらへば良いのではないかと思ふ。スウェーデンの様な人口密度の低い国に住んでみると、日本で心配されてゐる地方都市消滅の危機などはあまり大した問題ではない様に思ふ。けれども東京だけが膨れ上がることの方はやはり心配である。