残業の思ひ出 1

火 旧暦 12月14日 先勝 乙酉 四緑木星 Felix Felicia V3 23715日目

何日か前の日本経済新聞に、労働時間の長い人ほど、その上司が残業を評価してゐると思ってゐるといふ調査結果が載ってゐた。分かる様な気がする。僕はもう今ではすっかり暇な暮らしをする様になってしまったが、日本で仕事をしてゐた、まだ若かった頃、本当に忙しかったあの時代を振り返ると、仕事の量から推して、どう考えても残業なしで仕事が先へ進むとは信じられなかった。通常の勤務時間帯は朝から晩までびっしりと打ち合わせの連続で、10メートル先にあるトイレに人に邪魔されずにまっすぐにたどりつくのも難しいほど時間が取られた日々もあった。さういふことに付き合はねばならないので、自分が本当にしなければならない仕事は、人の帰った後か休みに出てやるしかなかった。が、そのうちに、そのやうな時間までをも追ひかけて来て、人が話を持ちかけて来て邪魔するものだから、本当に困った時代が思ひ出される。そのやうな切羽詰まった状況に無頓着な人から、具体的な代案も持ってゐないくせに、利いた風な口調で「残業しなければならない様な仕事しかできない奴は能無しだ」と宣はれると、あまり良い気はしなかった。だが、今になってみると、やっぱり自分はあの時どこか間違ってゐたのかもしれないと思ふ。色々な意味で、若かったなと思ふのだ。